シンポジウム抄録 1
「医療の質」
日本医科大学医療管理学教室
高柳和江
医療には医学医療(Medical Science)と医療提供サービス(Healthcare Delivery)の二つがある。医学医療は医学会レベルで討議される診断・治療法とその結果などであり、医療提供サービスは,実際に医療を受けるときのケアのプログラムや現場でのサービスを言う。医学医療では、証拠のある医療(Evidence Based Medicine、EBM)と患者の物語から構築する医療(Narrative Based Medicine、NBM)が車の両輪として脚光を浴びてきた。医療提供サービスにおいては、顧客満足の視点とともに効率の良い医療であることが求められる。
このためには、医療の質を定義し、評価することが必要になる。日本の医療においては、医学医療の評価は学会で個々に行われ、医療提供の質の評価は近年、日本医療評価機構によりなされてきた。病院組織として行うべき医療安全についての評価はいまだなされていない。
ドナベディアン(1980)は医療の質評価を「構造」「プロセス」「アウトカム」で行うことを提唱した。医療提供サービスは構造で評価されることが多く、医学医療の質は、死亡率、生存率などのアウトカムで比較することがなされてきた、患者にとっては、プロセスも満足度も含めたアウトカムも必要なことである。
こうした質の評価は、自己評価、同僚評価、第三者評価の方法がある。いずれも客観的な外的基準と評価者の内的基準の標準化が公平な評価に必要である。
顧客満足度は顧客の期待と反比例する、このためには社会の成熟が必要である。日本でも、顧客、さらには医療消費者としての視点をもった質の構築が求められるであろう。
【ご略歴】
1970年 | 神戸大学医学部卒業 |
1971年 | 順天堂大学外科専攻生 |
1977年 | 徳島大学大学院医学部医学博士課程(第一外科学)修了 1977年 クウェート国立サバー病院小児外科シニアレジデント |
1980年 | クウェート国立イブンシナ病院小児外科コンサルタント |
1987年 | 医療法人亀田総合病院小児外科医長 1989年 医療法人亀田総合病院院長補佐 |
1992年 | アイオワ大学医学部大学院医療管理学講座特別聴講生 |
1992年 | 現職 |
【主な著書】
- 生き方のコツ 飛島新社 2004
- 患者による医療 放送大学教育振興会 2003
- パッチ・アダムス いまみんなに伝えたいこと 主婦の友 2002
- よくわかる患者安全管理 日総研出版 2002
- 癒しの国のアリス-高齢者の尊厳と権利を求めて- 医歯薬出版 2001
- 世界の公衆衛生体系 日本公衆衛生協会 2001
- 医を測る 厚生科学研究所 1998
- 人間医療学 南山堂 1997
- 実践の場で生かす看護関係法規
- 医療の質・顧客満足度調査 日総研出版 1995
- 続・死に方のコツ 飛島新社 1996
- 死に方のコツ 飛島新社 1994